二関節筋

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二関節筋 ( bi-articular muscle ) とは、隣接する2つの関節に跨って構成し、隣接する2つの関節を同時に動かす筋である。

目次

詳細

構造

図1 下肢筋構造

二関節筋という言葉を知らなくても、力こぶは子供でも知っている場合が多い。しかし、ロボットには力こぶを構成するアクチュエータはない。二関節筋とはヒトの四肢運動に極めて重要な筋である。 ヒトがもつ二関節筋として、例えば、下肢では、大腿直筋、ハムストリングス(大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋の総称)、腓腹筋がある。いずれも、隣接する2つの関節に跨って構成するだけでなく、それぞれ隣接する2つの関節に同時に力を作用させる。また、ヒトの四肢には1つの関節を跨いで構成し、同関節だけを動かす一関節筋がある。 よって、ヒトの四肢には、一関節筋と二関節筋が様々な配置で構成されて、腕や脚の運動を制御している。

役割

二関節筋は、人の四肢にどんな運動を発生させるのか。  現在の殆どの考え方として、人の四肢運動はロボット工学の力学系を用いて解析されている。ロボット工学の力学系では、二関節筋は考慮されず、各関節を運動の原点とした関節トルク力学系で四肢運動の出力を算出している。  近年ロボット技術の進歩によって、ヒトの運動をロボットが支援する研究が注目されているが、一方でヒトとロボットの力出力特性の違いが問題視されている。2関節2自由度の運動に対して,一関節筋と二関節筋を考慮した生体力学系からヒトの四肢運動を解析した研究によれば、ロボットの出力特性は4角形になるが、ヒトは6角形となると報告されている。  ヒトの四肢運動では、関節トルク力学系と二関節筋力学系のどちらが正しい理論なのか。日常からヒトの運動障害とリハビリに関わっている理学療法士らによれば、二関節筋力学体系による出力特性の方が納得できるといわれている。

応用

なぜヒトが二関節筋をもつかの科学的根拠に関しては現在も様々な研究が行われている。また二関節筋はヒトだけに限らず、哺乳類をはじめ爬虫類、鳥類、両生類の動物、さらには外骨格の昆虫類にも存在することが報告されている。  現在二関節筋を応用したロボット技術が開発されている。それぞれの研究目的は様々であるが、共通していることは各研究者が二関節筋の重要性を理解していることである。実際に、二関節筋を装備したロボットの力出力特性はヒトと同じ特性となる。また、二関節筋を応用したオフィス用椅子も開発され、椅子の背もたれと座面が人の姿勢変化に柔軟に追従でき、着座からリクライニング、そして立ち上がりまで優れたフィット感を実現している。さらに、一関節筋及び二関節筋による四肢運動の筋出力を評価するソフトウェアが開発されている。  二関節筋を応用したロボット技術は、なぜ二関節筋がヒトや動物に存在するのかを解明するとともに、ヒトを優しく支援するヒューマンインターフェイス技術やパワーアシスト技術として今後も発展し続けるはずである。 [1] [2] [3]

関連項目

  • 生体力学
  • 関節座標系
  • 関節トルク力学体系
  • 二関節筋力学体系
  • ヒューマンインターフェイス
  • パワーアシスト

外部リンク

引用

  1. 熊本水頼(編著)、精密工学会生体機構制御・応用技術専門委員会(監修):ヒューマノイド工学―生物進化から学ぶ2関節筋ロボット機構、東京電機大学出版局
  2. 奈良勲(監修):二関節筋 運動制御とリハビリテーション、医学書院
  3. OKIテクニカルレビュー http://www.oki.com/jp/otr/2010/n216/pdf/216_r16.pdf