精密加工

触媒表面基準エッチング(CARE)

触媒表面基準エッチング ( CAtalyst-Referred Etching; CARE ) 法は、機械的な基準面を備えた化学研磨法である。基準面となる触媒表面に接触した被加工物表面凸部のみで生じる化学エッチングを用いることから、高効率かつ加工変質層を伴わない表面平滑化が可能である。

詳細

CARE法は、溶液中で被加工物表面と触媒表面とを接触・相対運動させることで、触媒表面に接触した被加工物表面凸部のみにおいて生じる化学エッチング(溶解)を利用し、加工変質層を導入することなく高効率な表面平坦化・平滑化を可能とする加工法である[1,2]。高硬度の触媒定盤を用いることで平坦化、軟質の触媒パッドを用いることで表面平滑化が行われる。触媒表面と接触しない被加工物凹部はエッチングされないことから、化学エッチングの選択性を有する結晶欠陥等が存在しても、それらの影響を受けることなく平坦化・平滑化される。
当初、被加工物として単結晶炭化ケイ素(SiC)基板、溶液としてフッ化水素酸(HF)、触媒として白金を用いたCARE加工[3]により原子ステップ‐テラス構造を有するSiC表面が得られることが分かり[4]、量子力学シミュレーションからCAREの加工メカニズムは触媒表面と接触したステップ端原子のバックボンドへのH-F分子の間接的な解離吸着であると結論付けられている[5]。その後、H-OH分子、すなわち水を用いても同様の反応が生じることが実験および量子力学シミュレーションから明らかとなり[6,7]、ガラス系材料[8]を含む多くの材料が加工可能であることが分かってきている。また、砥粒や薬液を用いない加工法であるため低環境負荷技術としても注目され、クリーンルームとの相性も良好であることから半導体産業においても今後の活用が期待されている。

引用

  1. 精密工学会誌, 78 (2012) 947.
    https://doi.org/10.2493/jjspe.78.947
  2. ECS Journal of Solid State Science and Technology, 2 (2013) N3028.
    https://doi.org/10.1149/2.007308jss
  3. Journal of Electronic Materials, 35 (2006) L11.
    https://doi.org/10.1007/s11664-006-0218-6
  4. Applied Physics Letters, 90 (2007) 202106.
    https://doi.org/10.1063/1.2739084
  5. Applied Physics Letters, 107 (2015) 201601.
    https://doi.org/10.1063/1.4935832
  6. Applied Physics Letters, 110 (2017) 201601.
    https://doi.org/10.1063/1.4983206
  7. Japanese Journal of Applied Physics, 57 (2018) 055703.
    https://doi.org/10.7567/JJAP.57.055703
  8. Review of Scientific Instruments, 90 (2019) 045115.
    https://doi.org/10.1063/1.5090320
執 筆 : 佐野 泰久

PV数 : 72