精密加工

プラズマCVM

プラズマCVM ( Chemical Vaporization Machining ) (あるいは Plasma CVM、PCVM)は、通常は低圧で生成されるプラズマを大気圧もしくは数十分の1気圧から10気圧程度の高圧力下で生成し、プラズマ中で生成された高密度の中性ラジカルと被加工物表面原子との化学反応を用いた高能率無歪加工法である。

詳細

図1 プラズマCVMの種々の応用形態

加工原理そのものは半導体製造プロセス等で用いられる低圧のプラズマエッチングと同じであるが、プラズマ発生圧力を大気圧もしくは数十分の1気圧から10気圧程度の高圧力としていることから、①中性ラジカル密度が大きく高い加工能率を有する、②反応ガスの平均自由行程が小さくプラズマを局所的に発生させることが可能であり高い空間分解能を有する、③プラズマ中の平均イオンエネルギーが小さく被加工物表面に損傷を与えない、といった特徴を有している[1]。中性ラジカルとの反応生成物が気化することで加工が進行することから、シリコン単結晶、石英ガラス、炭化ケイ素等においてはフッ素を含む反応ガスが、窒化ガリウムやガリウム砒素等においては塩素を含む反応ガスが用いられる。
これまでに、ワイヤー電極を用いた太陽電池用シリコン薄膜のパターンニング[2]やパイプ型電極を用いた非球面光学素子[3]、水晶基板の数値制御加工[4]、および硬X線用結晶ビームスプリッターの加工[5]、円筒型回転電極を用いたシリコンウエハの平面加工[1]、内周刃型回転電極を用いたシリコンブロックの切断加工[6]、球型回転電極を用いたX線用ミラー[7]やSOIウエハの数値制御加工[8]、小径円筒回転電極を用いた硬X線用チャネルカット結晶モノクロメーターのX線反射面無歪化加工[9]、多孔型平行平板電極を用いた炭化ケイ素基板の高速裏面薄化[10]、アレイ型平行平板電極を用いた高能率数値制御加工法の開発[11]等、多くの応用研究が行われている。

引用

  1. 精密工学会誌, 66 (2000) 1280.
    https://doi.org/10.2493/jjspe.66.1280
  2. Solar Energy Materials and Solar Cells, 48 (1997) 373.
    https://doi.org/10.1016/S0927-0248(97)00166-9
  3. 電気加工学会誌, 36 (2002) 5.
    https://doi.org/10.2526/jseme.36.82_5
  4. 精密工学会誌, 72 (2006) 934.
    https://doi.org/10.2493/jspe.72.934
  5. Optics Express, 21 (2013) 2823.
    https://doi.org/10.1364/OE.21.002823
  6. 精密工学会誌, 67 (2001) 295.
    https://doi.org/10.2493/jjspe.67.295
  7. 精密工学会誌, 67 (2001) 131.
    https://doi.org/10.2493/jjspe.67.131
  8. 精密工学会誌, 68 (2002) 1590.
    https://doi.org/10.2493/jjspe.68.1590
  9. Review of Scientific Instruments, 87 (2016) 063118.
    https://doi.org/10.1063/1.4954731
  10. ECS Journal of Solid State Science and Technology, 10 (2021) 014005.
    https://doi.org/10.1149/2162-8777/abdc47
  11. Review of Scientific Instruments, 92 (2021) 125107.
    https://doi.org/10.1063/5.0071623
執 筆 : 佐野 泰久

PV数 : 87