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2019年10月1日 (火) 20:04時点における最新版
マイクロメカニズム (Micro-mechanisms)は、従来のサイズに比べて小型化されることにより新たな特性が付与されたり、性能が向上する機械システムのことを指す。このため、1mm以下の機械システムだけではなく数cmサイズからnmサイズまでの広い範囲の機械、機構を指す。機械はサイズが小さくなると寸法による効果、具体的には摩擦や粘性の影響を受けやすくなり、慣性や重力の影響を受けなくなるなどの特性(寸法効果)があり、これらの特性に配慮したロボットや医療機器への応用が試みられている。
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詳細
寸法1mm以下の機械は全てマイクロメカニズムと呼ぶことができるが、数cm以下のマイクロロボットやシステムを想定してこの用語を使うことが多い。例えば、Fig.1に示すロボットは、消化管内を走行して検査・投薬・生体採取を目的に研究開発中の、カプセル型ロボットとその内部のアクチュエータである。内部のアクチュエータによる振動を用いて走行するため体内を傷つけずに移動でき、検査時間を短縮できる。走行カプセルでは、マイクロメカニズムに特徴的な、1)単純な機構、2)寸法精度が高くなくとも動作する(精度鈍感機構)、という方針のもと設計・製作された。簡単な動作原理であるため、さらなる小型化も可能なアクチュエータとすることができた。
マイクロメカニズム研究を初めに提唱したのは、故林輝東京工業大学名誉教授で、1970年代のことである[1]。当時研究対象としていた船舶用の大型歯車が1個35トンで1億円に対し、測定用マスターギヤが1個50gで17万円と、1g当たりの値段に約1000倍の格差があることに着目し、将来小さく付加価値の高い機械へ重点がシフトしていくと予想し研究を開始したそうである。
林教授は、マイクロメカニズム研究を広く世の中に起こすべく、1992年に精密工学会の研究専門委員会として「マイクロメカニズム研究専門委員会」を発足し、起業、大学から委員を集め研究を進めた。その後2003年に「マイクロ/ナノシステム研究専門委員会」(委員長:堀江三喜男東京工業大学名誉教授)、2018年からは委員長を中里裕一日本工業大学教授が引き継ぎ現在に至っている。その間に、委員会活動から世の中に出た製品として、セイコーエプソン株式会社から「ムッシュ」(1円玉より小さなサイズのメタリックな虫のような形状の自立走行ロボット)がある。
精密工学会では、春季大会の併設イベントとして毎年、国際マイクロメカニズムコンテストを開催してきた。実施はマイクロ/ナノシステム研究専門委員会が行い、コンテストを通じてマイクロメカニズム技術の向上と普及を目指してきた[2]。このコンテストのために開発された技術から開発されヒット商品となった事例もある。
米国のDARPAが、マイクロロボットのコンテストを実施し、優秀作品には予算を用意して開発を支援する計画を2018年に発表し、マイクロメカニズムへの関心が世界的にも高まっている[3]。
関連項目
外部リンク
引用
- ↑ 林輝、伊藤高廣、「運動とメカニズム」、コロナ社、pp.156-157, 2009.
- ↑ 先見の精密工学会 マイクロ/ナノシステム研究専門委員会活動レビュー、精密工学会誌, 2015年10月号pp.899-903/
- ↑ DARPAのマイクロロボットコンテスト紹介記事(IEEE Spectram誌のWebページ) https://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/robotics-hardware/darpa-wants-your-insect-scale-robots-for-a-micro-olympics (2019年9月確認)