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− | 光子の運動量変化に起因して作用する光放射圧は、その存在はニュートンによって予想され、1901年P. | + | 光子の運動量変化に起因して作用する光放射圧は、その存在はニュートンによって予想され、1901年P.Lebedevによって初めて実験的に測定された。光放射圧を利用して微小物体を捕捉・操作するレーザトラッピング技術は、1970年にアメリカ合衆国ベル研究所のArthur Ashkinらによって初めて実現された<ref>A. Ashkin, Acceleration and trapping of particles by radiation pressure, Physical review letters, vol. 24, no. 4, pp. 156 (1970)</ref>。それ以降、注目を集め幅広い分野で応用と研究が進んでいる。 |
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− | 一般的に、集光ビームを用いて微小物体をトラップすることが多い。上方から対物レンズによって集光された(落射照明)レーザ光で捕捉する構成をSingle beam gradient force trapping <ref>A. Ashkin, J. M. Dziedzic, J. E. Bjorkholm, S. Chu, Observation of a single-beam gradient force optical trap for dielectric particles, Optics letters, vol.11, issue 5, pp.288 (1986)</ref>(または光ピンセット)と呼び、その倒立型の構成をLevitation trapping <ref>A. Ashkin, J.M. Dziedzic, Optical levitation by radiation pressure, Applied physics letters, vol. 19, no. 8, pp.283 (1971)(1986)</ref>と呼ぶ。他には、エバネッセント光 <ref>M. Gu, J.-B. Haumonte, Y. Micheau, J. W. M. Chon, X. GanS., Laser trapping and manipulation under focused evanescent wave illumination, Applied physics letters, vol. 84, issue 21 pp. 4236 (2004) (1986)</ref>、光ファイバ<ref>嚴 祥仁,高谷裕浩,林 | + | 一般的に、集光ビームを用いて微小物体をトラップすることが多い。上方から対物レンズによって集光された(落射照明)レーザ光で捕捉する構成をSingle beam gradient force trapping <ref>A. Ashkin, J. M. Dziedzic, J. E. Bjorkholm, S. Chu, Observation of a single-beam gradient force optical trap for dielectric particles, Optics letters, vol.11, issue 5, pp.288 (1986)</ref>(または光ピンセット)と呼び、その倒立型の構成をLevitation trapping <ref>A. Ashkin, J.M. Dziedzic, Optical levitation by radiation pressure, Applied physics letters, vol. 19, no. 8, pp.283 (1971)(1986)</ref>と呼ぶ。他には、エバネッセント光 <ref>M. Gu, J.-B. Haumonte, Y. Micheau, J. W. M. Chon, X. GanS., Laser trapping and manipulation under focused evanescent wave illumination, Applied physics letters, vol. 84, issue 21 pp. 4236 (2004) (1986)</ref>、光ファイバ<ref>嚴 祥仁,高谷裕浩,林 照剛、光ファイバを用いたナノCMMプローブの研究(第8報)-基礎的な表面形状検出-、2009年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、pp. 485</ref>、光定在波<ref>P. Zemánek, A. Jonáš, L. Šrámek, M. Liška, Optical trapping of nanoparticles and microparticles by a Gaussian standing wave, Optics letters, vol. 24, issue 21, pp.1448 (1999)</ref>による光放射圧を利用して捕捉している例もある。また、多くのケースでは単一の微小物体を捕捉するが、SLM(空間位相変調器)を用いることで同時に複数の物体を捕捉する手法も開発されている<ref>G. Sinclair, P. Jordan, J. Courtial, M. Padgett, J. Cooper, Z. J. Laczik, Assembly of 3-dimensional structures using programmable holographic optical tweezers, Optics express, vol. 12, issue 22, pp. 5475 (2004)</ref>。 |
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− | + | レーザトラッピングは、様々な研究分野でよく用いられており、生物や応用物理の分野で、細胞やナノ粒子のマニピュレーションに用いられている。現在では細胞のマニピュレーション装置は一般に市販されている。精密工学の分野では、マイクロ粒子断層像計測技術<ref>八十川利樹, 石丸伊知郎, 小林宏明, 石崎勝己,近接2光束ピンセットによるマイクロ粒子断層像計測技術,精密工学会誌、vol. 71, no. 12, p.1595 (2005)</ref>、三次元座標測定器の位置検出プローブ[5]<ref>高谷裕浩, 佐藤憲章, 高橋 哲, 三好隆志, 清水浩貴, 渡辺万次郎、ナノCMMレーザトラッピングプローブに関する研究(第1報) -3次元位置検出の基本原理-、精密工学会誌、vol. 66, no. 7, pp.1081 (2000)</ref>、ナノ粒子の堆積によるナノ構造形成<ref>中野隆彦、鈴木淳志、加地正幸、中尾秀信、岩田 太,レーザートラップを用いた局所的電気泳動推積法による微細電子配線の構築と評価,2009年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,pp.461</ref>、マイクロ粒子のアセンブリ<ref> 池野順一,澤木大輔,森 幸博,堀内 宰,レーザ光線を利用した3次元微小構造物の組立技術に関する研究(第1報 空中における微粒子の操作法と組立法の提案),日本機械学会論文集(C編),vol. 64,pp.4434 (1998) </ref>、微粒子の質量計測<ref>針山達雄, 高谷裕浩, 三好隆志、振動レーザトラップによる超高感度微粒子質量計測に関する研究、2005年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、pp.485</ref>など先端の精密加工計測において積極的に応用されている。 | |
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2015年1月20日 (火) 15:22時点における最新版
レーザトラッピング ( Laser trapping ) とは、レーザ光によって物質に作用する光放射圧(Optical radiation pressure)を利用して微小物体を非接触に捕捉・操作する技術の総称である。
目次 |
詳細
光子の運動量変化に起因して作用する光放射圧は、その存在はニュートンによって予想され、1901年P.Lebedevによって初めて実験的に測定された。光放射圧を利用して微小物体を捕捉・操作するレーザトラッピング技術は、1970年にアメリカ合衆国ベル研究所のArthur Ashkinらによって初めて実現された[1]。それ以降、注目を集め幅広い分野で応用と研究が進んでいる。
レーザトラッピングに必要な力
光放射圧として微小物体を捕捉する力には、電磁場の強度勾配によって発生する勾配力と、光の進行方向に発生する散乱力がある。両者のうち、物体のサイズが波長より小さいナノメートルオーダになると勾配力が、波長と同等以上のマイクロメートルオーダになると散乱力が支配的となり、物体サイズに応じてうまく光放射圧を作用させる必要がある。力の大きさは、典型的にはnN(ナノニュートン)からpN(ピーコニュートン)のオーダである。
種類
一般的に、集光ビームを用いて微小物体をトラップすることが多い。上方から対物レンズによって集光された(落射照明)レーザ光で捕捉する構成をSingle beam gradient force trapping [2](または光ピンセット)と呼び、その倒立型の構成をLevitation trapping [3]と呼ぶ。他には、エバネッセント光 [4]、光ファイバ[5]、光定在波[6]による光放射圧を利用して捕捉している例もある。また、多くのケースでは単一の微小物体を捕捉するが、SLM(空間位相変調器)を用いることで同時に複数の物体を捕捉する手法も開発されている[7]。
応用
レーザトラッピングは、様々な研究分野でよく用いられており、生物や応用物理の分野で、細胞やナノ粒子のマニピュレーションに用いられている。現在では細胞のマニピュレーション装置は一般に市販されている。精密工学の分野では、マイクロ粒子断層像計測技術[8]、三次元座標測定器の位置検出プローブ[5][9]、ナノ粒子の堆積によるナノ構造形成[10]、マイクロ粒子のアセンブリ[11]、微粒子の質量計測[12]など先端の精密加工計測において積極的に応用されている。
外部リンク
引用
- ↑ A. Ashkin, Acceleration and trapping of particles by radiation pressure, Physical review letters, vol. 24, no. 4, pp. 156 (1970)
- ↑ A. Ashkin, J. M. Dziedzic, J. E. Bjorkholm, S. Chu, Observation of a single-beam gradient force optical trap for dielectric particles, Optics letters, vol.11, issue 5, pp.288 (1986)
- ↑ A. Ashkin, J.M. Dziedzic, Optical levitation by radiation pressure, Applied physics letters, vol. 19, no. 8, pp.283 (1971)(1986)
- ↑ M. Gu, J.-B. Haumonte, Y. Micheau, J. W. M. Chon, X. GanS., Laser trapping and manipulation under focused evanescent wave illumination, Applied physics letters, vol. 84, issue 21 pp. 4236 (2004) (1986)
- ↑ 嚴 祥仁,高谷裕浩,林 照剛、光ファイバを用いたナノCMMプローブの研究(第8報)-基礎的な表面形状検出-、2009年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、pp. 485
- ↑ P. Zemánek, A. Jonáš, L. Šrámek, M. Liška, Optical trapping of nanoparticles and microparticles by a Gaussian standing wave, Optics letters, vol. 24, issue 21, pp.1448 (1999)
- ↑ G. Sinclair, P. Jordan, J. Courtial, M. Padgett, J. Cooper, Z. J. Laczik, Assembly of 3-dimensional structures using programmable holographic optical tweezers, Optics express, vol. 12, issue 22, pp. 5475 (2004)
- ↑ 八十川利樹, 石丸伊知郎, 小林宏明, 石崎勝己,近接2光束ピンセットによるマイクロ粒子断層像計測技術,精密工学会誌、vol. 71, no. 12, p.1595 (2005)
- ↑ 高谷裕浩, 佐藤憲章, 高橋 哲, 三好隆志, 清水浩貴, 渡辺万次郎、ナノCMMレーザトラッピングプローブに関する研究(第1報) -3次元位置検出の基本原理-、精密工学会誌、vol. 66, no. 7, pp.1081 (2000)
- ↑ 中野隆彦、鈴木淳志、加地正幸、中尾秀信、岩田 太,レーザートラップを用いた局所的電気泳動推積法による微細電子配線の構築と評価,2009年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,pp.461
- ↑ 池野順一,澤木大輔,森 幸博,堀内 宰,レーザ光線を利用した3次元微小構造物の組立技術に関する研究(第1報 空中における微粒子の操作法と組立法の提案),日本機械学会論文集(C編),vol. 64,pp.4434 (1998)
- ↑ 針山達雄, 高谷裕浩, 三好隆志、振動レーザトラップによる超高感度微粒子質量計測に関する研究、2005年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、pp.485