濡れ性 ( wettability ) とは、主として固体表面に対する液体の親和性(付着しやすさ)を表すものである。 液体が水の場合には、濡れ性は親水性や疎水性という言葉でも表される。
詳細
接触角
濡れ性は接触角(図1)の大小で評価されることが多い。一様な固体表面上に液滴が形成されると、液滴外縁部(接触線)の接線と表面がある平衡角をもった球帽形となる。この平衡角のことを接触角と呼び、接触角が小さいほど濡れ性が良い、あるいは親液性が高いと称する。
接触角と界面エネルギー
接触角\(\theta\)と界面エネルギーの関係は以下のヤングの式(1)で表される。ここで\(\gamma_{SV}\),\(\gamma_{SL}\),\(\gamma_{LV}\)はそれぞれ固-気、固-液、気-液の界面張力である。$$ \gamma_{SV}=\gamma_{SL}+\gamma_{LV}\cos\theta (1)$$
界面張力の値は単位面積あたりの界面自由エネルギーと等しいので、式(1)は各\(\gamma\)に界面自由エネルギーを代入しても成立する。
濡れ性の制御
固体表面に特定の被膜を形成する、微細形状を作製する、あるいは両者を組み合わせることで濡れ性は制御できる。例えば、平滑なSiウェハ上での水接触角は80°以下であるが、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)で被覆したナノピラー構造上では150°以上となる(図2)。固体表面を異種材料や幾何形状でパターンを形成すると、その形状に応じた複雑な濡れや液滴移動を生じさせることが可能である[1]。
動的な濡れ性
実用的な表面では液滴をすばやく除去したいなどの要求があり、上記の接触角のような静的な濡れ性だけではなく、動的な濡れ性を評価することも必要である。動的な濡れ性は転落角や転落加速度が指標となる。転落角は固体表面上で静止していた液滴が移動し始める傾斜角であり、転落加速度は移動している液滴の加速度である(図3)。
親水性・疎水性
もともとは水への溶けやすさ・溶けにくさを指すが、物質の表面状態については、水に濡れやすいことも表す。物質表面に付いた水滴が薄く拡がって膜を作る状態は親水性が高いという。その反対に、付着した水滴が粒状状態を保つ状態は、疎水性または撥水性と言う。
外部リンク
引用
- 金子新,長田岳人,諸貫信行,親水/疎水パターンによる自律的液滴移動に関する研究,精密工学会誌,77,7 (2011) 700-706.
執 筆 : 金子 新


