偏光計測 ( Polarization mesurement ) とは、光の性質である偏光を被検物に入出射することで得られた偏光状態を、偏光素子を変調することで解析し、物体の表面あるいは内部構造を計測する手法である。
詳細
物体に入出射した光の偏光状態を、偏光素子を変調することによって解析することで、物体の表面あるいは内部構造の計測ができる。偏光計測について、提案されている手法を以下に示す。
光変調方式としては、物質に電場が印可されたときに、電場の強さの2乗に比例した複屈折が生じるカー効果を用いた手法、同様に誘電体の等方性結晶に電場をかけた時に生じるポッケルス効果を用いた手法がある。磁気変調方式では、磁気を平行な直線偏光を物質に透過させたときに偏光面が回転するファラデー効果を用いた手法がある。電気的変調法では、液晶セルを用いた方法がある[1]。電圧を印加し、液晶分子に3次元的なひねりを与えることによって、可変位相子として機能させるものである。光ヘテロダイン干渉法では、周波数がわずかに異なる光を干渉させることで、光のうなりを生じさせ、一方の光を変調させることによって得られるうなりの変化から物質の複屈折を解析するものである。参照光を大きくすることで微弱変化を検出可能であることや、外乱による光強度振動の影響を受けにくい特徴がある。PEM(光弾性変調器)ではピエゾアクチュエータ等の圧電素子で光学素子に圧力を加えることで生じる応力性複屈折を制御し、偏光変調する[2]。変調速度が高い特徴がある。機械的変調方法としては回転検光子法がある。入射側と出射側の偏光素子の回転角を一定の角度比を保ったままモータ等を用いて同期回転することで多周期混在の信号を得る。得られた信号をフーリエ変換することによって物質の複屈折を計測するものである[3]。
また、チャネルド分光干渉を用いた手法では、2つの高次位相子の波数依存性を用いて、出力光を分光することによって得られた各波数の光強度変化を解析することによって1回のスペクトル測定でストークスパラメータの波長分布を1ショットで求めることができる[4]。また、4ショットの分光情報をとることで、ミュラー行列を求める手法が提案されている[5]。さらにはイメージセンサの各画素にマイクロ偏光素子を実装することで時間的変調をなくし高速かつ1ショットで偏光計測をする手法が実現されている[6]。
こうした様々な偏光変調手法によって偏光計測の定量化が実現され、膜厚計測、形状計測、および複屈折計測装置として実用化されたことによって偏光計測の応用範囲が広がっている。
外部リンク
引用
- 田中正之介, 中島吉則, 雨宮秀行, 大谷幸利, “液晶位相変調器を用いたストークス偏光計” , 光学第41巻, 第3号, (2012) pp.149-157.
- Hinds Instruments, Inc., “MEASUREMENT OF WAVEPLATE RETARDATION USING A PHOTOELASTIC MODULATOR,” US Patent, 6473181 B1 (2002).
- R.M.A.Azzam, “Photopolarimetric measurement of the Mueller matrix by Fourier analysis of a single detected signal,” Optics Letter, Vol. 2, (1978) pp.148-150.
- K. Oka and Y. Ohtsuka, “Polarimetry for Spatiotemporal Photoelastic Analysis,” Experimental Mechanics, Vol.33 (1993) pp. 44-48.
- 大谷幸利, 若山俊隆, “分光偏光変調器を用いたミュラー行列測定” , 光学, 第39巻, 第8号, (2010) pp. 385-391.
- Takashi Onuma, Yukitoshi Otani, “A Development of Two-dimensional Birefringence Distribution Measurement System with a Sampling Rate of 1.3 MHz,” Optics Communications, Vol. 315, No.15 (2014) pp. 69-73.