現物融合型エンジニアリング

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現物融合型エンジニアリングとは、現物(実体としての部品や製品、試作品など)の3次元スキャンデータを活用して現物とデジタルエンジニアリングを統合したものづくり技術を開発する融合技術領域を指す。

詳細

現物融合型エンジニアリングは、近年、製品製造のデジタル化が進むにしたがって現れた比較的新しい分野である。その背景には、CAD・CAEなどコンピュータを用いた製造支援技術が一般化するにつれ、より高度なものづくりを求めて、現物の情報を製造に取り入れようとする動きが高まってきたことが挙げられる。現物の計測データを用いることでものづくりの高度化が期待される場面としては、例えば、製品現物の形状モデルを用いて正確な物理シミュレーションを行いたい、アセンブリ品の組み付けの様子を確認したい、試作品の形状をCADモデルに反映することで、製品の形状設計にかかる時間と手間を削減したいなどといったものがある。また、複合材料等の未知の材料や新規な製造プロセスの出現・技能者不足などにより、従来のノウハウが通用せず、計測による現物のデータ化が必要とされる場面も出てきている[1]


現物融合型エンジニアリングは、現物の3次元形状計測データをデジタルエンジニアリング(ここではCAD/CAM/CAE を中心とした設計・製造を支援する情報システムを総称的に表す)に活用することで上述のような需要に応え、製品開発力の向上を図る技術である(図1)。具体的な技術としては現在以下のようなものが考えられている[2]

  • 現物検証:形状・寸法の比較検査、ベンチマーキング
  • 現物設計:現物からの設計形状取得
  • 現物CAE:形状計測データを用いたシミュレーション
  • 現物計画:現物に基づいた加工・生産計画、検査・計測の自動化


現物融合型エンジニアリングの実現には高精度な計測データが必須である。現物の3次元形状計測には、X線CTや光学式スキャナ(サーフェススキャナともいう)が用いられることが多い。処理に応じた計測法の採用や、計測データの品質を高めるためのプリ・ポスト処理も重要である。しかし、ここ10年ほどの技術進化には目を瞠るものがあるとはいえ、現時点でハードウェアまたはソフトウェア独自の工夫には限界があるようである。そこで、現物融合型エンジニアリング分野において今までに開発された、データ処理と製造法の融合技術を応用し、ハードウェア・ソフトウェア技術を統合した高品質形状計測データ取得法の開発も始まっている。このような動きをうけて、近年は、形状計測データ取得そのものに対する基盤技術の開発も、現物融合型エンジニアリングに含まれると考えられるようになっている[3]

図1 現物融合型エンジニアリング

関連項目

引用

  1. 鈴木宏正、3次元計測とデジタルエンジニアリングの融合、精密工学会誌 Vol. 71, No. 10, 2005.
  2. 鈴木宏正、3Dスキャニング技術を活用するデジタルエンジニアリング、精密工学会誌、Vol. 83, No. 10, 2017.
  3. 大竹 豊、産業応用における3Dスキャニング技術の活用、精密工学会誌、Vol. 79, No. 10, 2013.