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2018年1月11日 (木) 14:07時点における版

CAD は Computer Aided Design の略語で、「キャド」あるいは「シー・エー・ディ」と呼んでいる。コンピュータ援用設計とも訳されている。

目次

詳細

図1 コンピューターとCADソフトウェアの変遷

CADの概念と研究

 1960年代の始めにMITのCADプロジェクトからSketchpadが報告され、CADの概念が明確になった[1]。このプロジェクトでは設計者とコンピュータがディスプレイ上の2次元図形を介して対話形式に作業を実行するという成果を得た。しかし、3次元の図形処理についてはまだ困難であった。1973年の国際会議PROLAMATで3次元の図形処理に関する重要な発表が二つあった。一つはBUILDと呼ばれるシステムである[2]。もう一つはTIPS-1と呼ばれるシステムである。それ以後、研究の主体が3次元の図形処理になった[3]

CADとCAM/CAEとの関連

 CAMはCADよりも先に、数値制御工作機械(NC)との関連で研究が始まっていた。1950年代の後半にNC用の自動プログラミング言語APTの開発が始まった。APTでは図面とプロセスプランニングからNCテープを自動的に生成するプロセッサの開発が行われた。また、現在、CAEと呼んでいるFEM(有限要素法)プログラムは計算力学の部門で早くから研究開発され、NASTRAN,STRUDL、SAP、FEMASなどのシステムがCADより早い時期に商用化された。FEMでは、解析の形状や条件を定義するためのプリプロセッサと解析結果を図で表示するポストプロセッサも開発していた。このように、CAD、CAM、CAEは、それぞれ独自に研究・開発が始まった。それらが、設計製造において連携できるようになったのは3次元モデルやそのデータ構造が定義されてからである。

形状モデル

 3次元モデルには、ワイヤーフレームモデル、サーフェースモデル、ソリッドモデルの3つのものがある。ワイヤーフレームモデルでは立体を構成する頂点とその頂点を結ぶエッジ(直線、曲線)で形状を定義している。立体の面に関する情報はない。FEMでは立体形状を有限要素の集合で定義する。有限要素には4面体、5面体(三角柱)、6面体(四角柱)があり、それぞれワイヤーフレームの表現である。CADのワイヤーフレームモデルを有限要素で細かく分割することができるようになると、CADでFEMの解析モデルを定義することが一般的になり、CADとCAEがリンクされた。  サーフェースモデルはワイヤーフレームモデルに面の情報を付け加えたものである。これまでに開発・商用化されている多くのCAMシステムはサーフェースで形状を定義している。それは、CAMで工具経路を計算するとき、工具の動きをPartサーフェース、Driveサーフェース、Checkサーフェースの三つのサーフェースで決めているからである。サーフェースモデルによりCADとCAMがリンクした。  ソリッドモデルはサーフェースモデルに質量の情報を付け加えたものである。このモデルは、立体の物理的な情報(体積、重心、慣性モーメント)や複数の立体の干渉を計算することができるので機械設計の分野で多用されている。  3次元モデルと同様に製図作業を支援するCAD(CADD:Computer Aided Design Drafting)も1980年代以降、広く普及し、製図作業はドラフターからCADD に代わった。

コンピュータとCADソフトウェア

 CAD/CAMのソフトウェアはコンピュータのハードウェアの技術進歩に合わせて発展してきた。コンピュータの演算処理速度とメモリー容量がCAD/CAMに深く関連している。1970年代から80年代の後半までは、大型の汎用コンピュータが主流であった。日本の自動車業界ではこのころから大型の汎用コンピュータを使って自社でCAD/CAMを開発していた。それらは、CADDと、ワイヤーフレームモデルあるいはサーフェースモデルのCAD/CAMであった。コンピュータの形態は、汎用コンピュータに複数の端末が接続しているホスト集中型であった。  80年代終わりになると、汎用コンピュータと同じ処理能力をもつエンジニアリングワークステーションと呼ばれるコンピュータでCADやCADDを実行するようになった。このコンピュータのオペレーティングシステムはUnixであり、コンピュータにはレンダリングや立体表示のために専用のグラフィックボードが搭載されていた。その時期に、ソリッドモデルの3次元CADが機械設計で利用されるようになってきた。そして、複数のコンピュータによるネットワーク分散型の形態が始まった時期でもある。  90年代に入ると、コンピュータの高性能化と低価格化が加速され、ハイエンドのパーソナルコンピュータでCADを実行するようになった。ハードウェアがエンジニアリングワークステーションからパーソナルコンピュータに、オペレーティングシステムがUnixからwindowsになり、サーバークライアントによるコンピュータネットワークができあがった。この時期になると、多くの教育機関でもCADDを使った設計製図教育が行われていた。また、いくつかの大学や高専では90年代後半にソリッドモデルのCADで設計製図を、サーフェースモデルのCAMで機械加工の授業も行われていた。  2000年以降、自動車業界の再編やCADメーカの統合があり、設計製造の基幹システムであるCAD/CAMシステムの転換を図った企業もある。また、デジタルモックアップツールが開発され設計製造を支援する新しい試みも行われている。

CADデータの交換

 異なるCADシステム間でデータを交換する形式として、図面ではDXF (AutoCADの形式、CADDのデータ交換で多用されている)、サーフェースではIGES(ANSIによって規格化されたCADデータの形式、曲面のデータ交換に多用されている)、ソリッドではSTEP( ISOによって規格化され、製品情報のデータ交換を目的としたもの)およびParasolid(ソリッド形状のモデリングカーネル)あるいはACIS(ソリッド形状のモデリングカーネル)がある。

図1にコンピュータ、CAD/CAM、曲面の数式表現、およびソリッドモデルの変遷を示す。

関連項目

外部リンク

引用

  1. I.E.Sutherland, Sketchpad, A Man-Machine Graphics Communication System, Proc., SJCC,1963, p.3291)
  2. I.C.Braid, C.A.Lang, Computer-Aided Design of Mechanical Components with Volume Building Bricks, proc. of PROLAMAT’73, 1973
  3. N.Okino, Y.Kakazu, H.Kubo, TIPS-1, Technical Information Processing System for Computer Aided Design, Drawing and Manufacturing, Proc. of PROLAMAT’ 73, 1973