電子ビーム加工

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電子ビーム加工(Electron Beam Machining, 略称EBM)は,10-4 – 10-5 Torr程度の真空中で高速運動する電子を集束させて高エネルギービームとして材料へ照射することで,電子の運動エネルギーの多くが熱エネルギーに変換されて材料を瞬時に加熱,溶融もしくは蒸発させて所望の形状に加工する熱加工プロセスであり,主に金属材料の穴あけ,切断,および溶接等に用いられている.

目次

詳細

図1 電子ビーム加工装置の模式図

タングステン等で作られた陰極を10-4 – 10-5 Torr程度の真空中で2500 – 2800K程度に加熱することにより熱電子放出現象が生ずる.図1は電子ビーム加工装置の一例を示したものであり,陰極より放出された電子は陽極に印加された高電圧によって加速,電磁コイルによって集束され,微小領域に高エネルギービームとして材料へ照射される[1] [2].これにより,材料を瞬時に溶融,蒸発させるパワー密度106 – 107W/cm2以上を得ることができるとともに,印可電圧,電流値,スポットサイズ等を調節することで,多様なパワー密度を設定することが可能である.また,電子は質量が極めて小さいが電荷を有していることから電気的もしくは磁気的な手法によって,時間的,空間的に電子ビームの照射位置を高速制御可能である.これにより,アニーリングや焼き入れ等の表面処理,熱伝導型溶接や深溶け込み型溶接等の接合,さらには穴あけや切断等の除去加工等のプロセスに利用されている.他の高エネルギービームであるアークやレーザなど比較して,より微細領域に高エネルギーを投入できることから厚板等の接合に広く利用されている.一方,直径60mm以上の領域においてパワー密度106 – 107W/cm2以上を得される大面積電子ビーム照射法があり,材料表面を瞬時に溶融,蒸発させることで表面を一括で平滑化,さらに対象材料を表面へコーティングスする技術も開発されている[3]


関連項目

レーザ加工
アーク溶接

外部リンク

引用

  1. H. Schultz, Electron beam welding, Abington Publishing, Cambridge, 1994.
  2. 佐藤敏一,特殊加工,養賢堂,1992.
  3. Y. Uno et al., High Efficiency Finishing Process for Metal Mold by Large-area Electron Beam Irradiation. Precision Engineering, Vol.29, No.4, pp.449–455, 2005.