ボールバー

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ボールバー ( ball bar ) は、変位計を内蔵した伸縮自在な棒の両端に取り付けた二つの球の間の相対変位を検出する測定器で、主にNC工作機械の運動精度測定に使用されている。ボールバーの二つの球は、磁石を使った3点接触のソケットを介してNC工作機械のテーブルと主軸とに取り付け,ボールバーに内蔵の変位計で円弧補間運動中の主軸とテーブルとの間の変位を測定する。変位計には、作動トランス(LVDT)を用いるものが多い。

図1 ボールバー

詳細

ボールバーは、3次元座標測定機の基準器として提案されていたものを、J. B. Bryanが磁石で球を吸い付けることで短時間で多くのデータを取れるように提案し、1982年にPrecision Engineering誌[1]に発表したのが始まり。そこで、固定式のものをFixed Magnetic Ball Bar、伸縮可能なものをTelescoping Magnetic Ball Barと名付けた。垣野らは、自作のボールバーを用いて測定した円弧補間運動軌跡の特徴と直角度、真直度、NCの誤差などのNC工作機械固有の誤差との関係を明らかにし、1986年にDouble Ball Bar(DBB)と名付け精密工学会誌[2]に発表した。また、このDBBを測定器として商品化し、ボールバーによる測定・診断技術を世界に先駆けて日本で普及させた。

このボールバーは、NC工作機械の円弧補間運動精度測定器として1996年にISO規格[3]に盛り込まれ、ボールバーを利用した測定方法もISO規格[4]となった。最近では、円弧補間運動だけでなく、5軸制御マシニングセンタの同時3軸制御運動[5]や同時5軸制御運動[6]などの複雑な運動の測定にも利用され始めている。

外部リンク

引用

  1. Bryan, J.B., A simple method for testing measuring machines and machine tools, Part 1, Principles and applications, Precision Engineering, vol.4, No.2 (1982), pp.61-69.
  2. 垣野義昭,井原之敏,亀井明敏,伊勢徹,NC工作機械の運動精度に関する研究(第1報)-DBB法による運動誤差の測定と評価,精密工学会誌,Vol.52, No.7 (1986),pp.1193-1198.
  3. ISO 230-1:1996, Test code for machine tools - Part 1: Geometric accuracy of machines operating under no-load or finishing conditions.
  4. SO 230-4:1996, Test code for machine tools - Part 4: Circular tests for numerically controlled machine tools.
  5. 斎藤明徳,堤正臣,牛久健太郎: 5軸制御マシニングセンタのキャリブレーション方法に関する研究(第2報) -同時3軸制御運動を用いた位置偏差および角度偏差の推定-,精密工学会誌,Vol.69, No.2 (2003),pp.268-272.
  6. 井原之敏,田中和也,多軸工作機械で円錐台加工試験に対応したボールバー測定法(第1法)-主軸旋回形5軸MCでのボールバー測定と実加工との比較-精密工学会誌,Vol.71,No.12 (2005),pp.1553-1557.