大気圧プラズマCVD法

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大気圧プラズマCVD法 ( Atmospheric-pressure Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition ) は、大気圧下で発生させた反応性プラズマを用いるプラズマCVDの一種である。大気圧プラズマを発生させる方法としては、プラズマジェットの他、交流や直流パルス電力を用いた誘電体バリア放電やコロナ放電などが一般的であるが、高周波(RF)や超高周波(VHF)電力を用いた新しい手法も開発されている。大気圧という高圧力雰囲気を利用することによって能率的にラジカル種を生成でき、また、高価な真空排気系が不要となるため、種々の機能薄膜の高速・低コスト成膜技術への応用が期待されている[1][2][3]

目次

詳細

一般的に大気圧下での放電は、アーク放電のように電子温度、イオン温度、ガス温度がほぼ等しい熱平衡プラズマになりやすいため、通常の機能薄膜形成プロセスには利用できない。しかし、電極表面を誘電体で覆い、数kHzから数10 kHzの交流電圧を印加することにより、大気圧下でもパルス的なグロー放電を比較的安定に生じさせることができる(誘電体バリア放電)。また、誘電体バリアを用いない大気圧グロー放電の発生方式として、電力をパルス化して放電がアーク放電に移行する前に電圧を切ったり、電極間距離を小さくして放電の空間的な不均一性を改善したりする方法がある。

大気圧プラズマを応用すれば、低温かつ高能率な成膜プロセスを実現可能になるだけでなく、使用するガス種によっては高価な真空排気系が不要となって装置を大型化し易いなど、デバイス製造コストの削減に関してもメリットは大きい。そのため、成膜用ガラス基板表面のクリーニング、樹脂基板の表面改質によるぬれ性、付着力や接着性能の改善などの表面処理プロセスへの応用が活発に行われてきた。一方、薄膜形成に関しては、大気開放系での低温・低コスト成膜法を目指した開発が中心となっており、大気成分の混入が大きな問題にならない酸化物系薄膜(SiO2,TiO2,ZnO等)や炭素系薄膜(DLC,非晶質C)などのコーティング技術に関する研究が多数報告されている。

一般に大気圧プラズマを用いた薄膜形成プロセスにおける問題点として、成膜ラジカルの気相中で凝縮に起因した基板のダスト汚染が挙げられる。そのため、減圧プラズマに代わるプラズマCVD法のための新たなプラズマ源として大気圧プラズマを実用化するためには、基板のダスト汚染を克服することがなによりも重要である。ただし、最近では、数10 MHzやそれ以上の超高周波(VHF)帯の電力を用いた新しい大気圧プラズマ源の開発に伴って基板のダスト汚染を防止できるようになりつつあり、シリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)、窒化Si(SiNx)といった機能薄膜の低温・高速・高品質成膜も可能となっている。

関連項目

外部リンク

引用

  1. 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会編,“大気圧プラズマ 基礎と応用”, オーム社 (2009)
  2. 沖野晃俊 監修,“大気圧プラズマの技術とプロセス開発”,シーエムシー出版 (2011)
  3. 小駒益弘 監修, “改訂版 大気圧プラズマの生成制御と応用技術”, サイエ ンス&テクノロジー (2012)