延性モード切削

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延性モード切削 ( ductile regime machining ) とは、セラミックやガラス等の脆性材料を切削(広義の切削,従って研削も含まれる)する際、切込み(切り取り厚さ)が概ね1μm以下で行うと延性破壊で切りくずが生成され,加工面が従来の脆性材料の切削(脆性モード)では生成されないスムースなものが得られる加工法である。

目次

詳細

臨界切取り厚さ(1μm以下)

 延性モード切削での切り取り厚さより大きい切取り厚さになると脆性破壊で切りくずが生成される。その最小切り取り厚さが、臨界切り取り厚さである。

 加工面の生成に直接関与する除去部分での切り取り厚さ、すなわち臨界切り取り厚さが多くの研究で概ね1μm以下とされている。

 通常の研削加工やラッピング等では、加工面表面粗さの5, 6倍程度の深さまで表面層にクラックが生成されている[1]と言われている。

切りくず

 切りくずが極微小な規模の脆性破壊で生成され,加工面生成が工具のバニシ(すなわち塑性変形)による場合も延性モード切削にはなるが,その実現可能性は低い。

 延性モード切削での切りくずは、表面にラメラ模様を呈する鋸歯状とする報告[2]もある。

加工条件の影響

 また雰囲気や加工速度によって臨界切り取り厚さは変化するとも考えられるが、大幅に変化すると言う報告は見うけられない。静水圧下では、1μm以上とする報告[3]もある。

歴史

 歴史的に見れば、1960年代の後半頃からこのような延性モード切削(当時はこのような命名はされていなかった)の研究が、ガラスの超精密機械加工[1]について行われてきた。1980年代半ば以降,延性モード加工と言う名称で呼ばれるようになったと思われる。

用途ならびに工作物

 光学性能の向上を目的としてガラスレンズの高精度な微細形状の加工技術として有効である。工作物は、ガラスの他,水晶,シリコン、セラミック,ゲルマニウム等の脆性材料である。

工作機械

 延性モード切削を実現するには,高剛性,高精度な工作機械でしか出来ないのは当然のことである。

関連項目

外部リンク

引用

  1. 橋本洋 他, 超精密加工マニュアル, 大河出版(1989), 67.
  2. 柴田順二, 黛 政男, 清水 毅, ガラスの延性形切削現象の観察, 砥粒加工学会誌, 44,1(2000)37.
  3. 吉野 雅彦、北村元、小川康文:硬脆機能材料の高静水圧環境における延性モード切削(第二報)高静水圧環境における種種の硬脆材料の切削実験、精密工学会誌, 68-10(2002), pp.1351-1355.