「CFRP」の版間の差分
JSPEeditor (トーク | 投稿記録) |
JSPEeditor (トーク | 投稿記録) |
||
67行: | 67行: | ||
FRPの成形手法は生産手段から大別すると,手作業成形,機械成形,連続成形とその他に分けられる.図2に,その分類図を示す.また,以下にCFRPの成形に用いられる代表的な成形手法の説明を示す. | FRPの成形手法は生産手段から大別すると,手作業成形,機械成形,連続成形とその他に分けられる.図2に,その分類図を示す.また,以下にCFRPの成形に用いられる代表的な成形手法の説明を示す. | ||
− | |||
【手作業成形法】 | 【手作業成形法】 | ||
84行: | 83行: | ||
◦ 真空バッグ法 | ◦ 真空バッグ法 | ||
− | + | 真空バッグを用いた大気圧による加圧とオーブンによる加熱により成形する手法で,型にプリプレグシートを積層し,真空バッグでバギングし,真空を引き続けながらオーブンによる加熱で硬化を行う. | |
− | + | 低温で硬化する樹脂を用いることで,型材料にウレタンなどのフォーム材や木材などの安価で加工が容易な材料の利用が可能であり,ボートやヨットの試作などの大型部品のワンオフ成形に有効である. | |
− | + | この成形法では,バッグ内の真空到達度と成形部材内の通気性が成形品質を大きく左右する.高い真空度は成形品内の気泡除去に効果があり,またそのためには各層における通気の確保が必要である. | |
2018年11月19日 (月) 22:51時点における版
CFRPとは,Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化樹脂の略称で,樹脂を炭素繊維により強化した複合材料の総称である.
目次 |
詳細
• 特徴
複合材料とは,二つ以上の異質で異形の材料から構成され,より高い力学的特性や機能を発揮する材料である.その中で,強い繊維を母材(Matrix)で結合して,繊維の特性を生かした複合材料を繊維強化複合材料(FRP: Fiber-Reinforced-Plastics)と呼び.CFRPはFRPの一種である.この材料では,繊維に荷重を分担させることで,高強度の複合材料を実現できる.炭素繊維の他にFRPに用いられる主な繊維材料は,ガラス繊維,セラミック繊維,アラミド繊維,絹,ジュート,炭素鋼,アルミニウム等である.また,近年では,セルロースナノファイバー(CNF)等も用いられる.
繊維材料は,金属と比較して質量密度が低く,引張強度と弾性率がはるかに大きいことが特徴である.炭素繊維は,他の繊維の引張強度が0.5-2.5 [GPa]であるのに対し7 [GPa]程度と非常に大きな引張強度を持っており,比重は1.8前後で,鉄の1/4程度と軽量である.そのため,CFRPは他のFRPと比較して比強度に優れる.
CFRPの耐熱温度・耐薬品性・硬さなどの特性は使用する樹脂に影響されるが,金属とは異なり酸化還元反応による腐食が発生しない材料であり,疲労し難い材料であることから高い耐久性が期待できる.また,高いX線透過率を持つことも特徴の一つである.成形品の具体的な機械的性質については,材料の仕様により大きく変化するためここではあえて割愛する.
FRP成形品はその構造上,繊維方向の剛性と強度は大きくなり,それ以外の方向では相対的に小さい値を示す.そのため,その異方性を考慮した設計が必要であり,通常は積層して用いられる.航空機の翼等では,繊維の配向によって飛行中の負荷による変形を制御するといった,材料の異方性を積極的に利用した設計が行われている.また,破壊様式も金属と比較して複雑であるため,強度の予測が難しいといった金属材料には存在しない課題も持つ.
• 材料分類
CFRPの仕様は炭素繊維の種類・形態と母材の種類の組み合わせにより決定される.繊維や樹脂の形態から分類した場合,図1のようになる.繊維の形態から分類した場合,連続繊維と不連続繊維に分類できる.連続繊維はその織物形態から,不連続繊維は繊維の長さから分類することができる.
• 中間基材
CFRPは成形に用いられる手法別に,様々な形態の中間基材が用いられる.現在用いられている材料の一例を以下に示す.
例:
【連続繊維】
◦ ドライファブリック
ドライファブリックは樹脂の含侵が行われていない炭素繊維の布である.また,その布を目的形状に近い形状に予備的に成形したものをプリフォームと呼び,これらはRTM(Resin Transfer Molding)等に用いられる. 従来は平織り,綾織等の材料が一般的であったが,近年では賦形性に優れた多軸挿入たて編物基材(Non-Crimp Fabric : NCF)等も用いられる.
◦ セミプレグ
繊維布に樹脂を半含侵した材料であり,プリプレグと比較して成形時に繊維が容易に移動できる.RTM等に用いられる.
◦ プリプレグ(織物)
繊維布に熱硬化性樹脂を含侵し半硬化状態にした材料であり,真空バッグ法,オートクレーブ法による硬化による成形に用いられる.
◦ テーププリプレグ
一方向繊維(UD)プリプレグを一定幅にカットした材料でATL(Automatic Tape Lay-Up)等に用いられる.
◦ トウプリプレグ
糸束状の炭素繊維に熱硬化性樹脂を含侵した材料で,FW(Filament Winding)に用いられる.
【不連続繊維】
◦ SMC (Sheet Molding Compound)/BMC (Balk Molding Compound)
不連続繊維と樹脂,硬化剤,顔料,離型剤,増粘剤等を混錬し,シートまたはバルク状に成形し取り扱い性を良好にした材料である.マッチドメタルダイ法により成形する.
◦ 不連続繊維ペレット
熱可塑性樹脂と不連続繊維を混錬しペレット状にしたもので,以下の表1のように分類される.また,これらの材料を利用してプロックやシート,丸棒等様々な形態の材料が供給されている.
• 代表的な成形手法
FRPの成形手法は生産手段から大別すると,手作業成形,機械成形,連続成形とその他に分けられる.図2に,その分類図を示す.また,以下にCFRPの成形に用いられる代表的な成形手法の説明を示す.
【手作業成形法】
◦ スプレーアップ法
積層時の原料供給をスプレー機により機械化させ連続化した手法で,触媒と促進剤を加えた樹脂をスプレーガンから吹き付け,同時に長繊維(25~50mm)を圧縮空気で吹き付け積層する.スプレーガンを塗装ロボットに取り付けることで,比較的容易に自動化が可能である. しかし,脱泡工程の自動化は困難であり,無圧成形であるため繊維の含有率が低いといった問題がある.
◦ ハンドレイアップ法
常温常圧でガスの発生なく硬化可能な不飽和ポリエステル樹脂を利用した最も基本的な成形手法である.刷毛やローラーなどの簡単な器具を用いて,人の手により型の上で繊維に樹脂を含侵させながら順次積み重ねた後,適切な温度管理下で樹脂を硬化させ,脱型仕上げを行う.
型と設備費が安価なため,試作や大型品の少量生産に適している.しかし,作業者や場所などにより品質の差が発生しやすく,加圧しないため気泡などの欠陥が発生しやすい.
◦ 真空バッグ法
真空バッグを用いた大気圧による加圧とオーブンによる加熱により成形する手法で,型にプリプレグシートを積層し,真空バッグでバギングし,真空を引き続けながらオーブンによる加熱で硬化を行う.
低温で硬化する樹脂を用いることで,型材料にウレタンなどのフォーム材や木材などの安価で加工が容易な材料の利用が可能であり,ボートやヨットの試作などの大型部品のワンオフ成形に有効である.
この成形法では,バッグ内の真空到達度と成形部材内の通気性が成形品質を大きく左右する.高い真空度は成形品内の気泡除去に効果があり,またそのためには各層における通気の確保が必要である.
図表の追加
また、写真や図面を利用する場合は、適切なサイズを用いたサムネールを設定し、枠を画面の右側に配置することをお勧めします [1]。
関連項目
外部リンク
引用
1. 原新版 複合材料・技術総覧,監修 福田 博,邉 吾一,末益博志,(株)産業技術サービスセンター,2011年,ISBN978-4-915957-52-9 C3053
2. 日本製鋼所技報 No.67(2016.11)
- ↑ 本テンプレートにもありますが、セクションの冒頭にリンクを作成することで文章がうまく図表の左側に回りこみます
記入の最後には、必ず用語の読み方とカテゴリに関する情報を追加するようにしてください。
[[Category:]]