「プラズマCVD」の版間の差分
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2016年5月10日 (火) 16:20時点における最新版
プラズマCVD ( plasma-enhanced chemical vapor deposition, PECVD ) は、種々の機能薄膜の形成に用いられる化学気相成長(CVD)法の一種であり、化学反応を活性化させるエネルギー源として反応性プラズマを用いている。主に高周波の電力を印加することによって原料ガスをプラズマ化させ、熱反応では困難な化学反応を比較的低い基板温度においても生じさせることができるのが特徴である。半導体素子の製造などに広く用いられている[1]。
詳細
CVDは、原料物質を含むガスの化学反応や熱分解によって、所望の組成・構造の薄膜を基板上に形成する方法の総称である。IC 製造上の重要工程の一つであり、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、エピタキシャルシリコン薄膜などの製造に用いられる。加熱した基板表面上での熱化学反応を用いて薄膜を推積させる熱 CVD法が最も広く使われるが、化学反応や熱分解を促進させるためにガスをプラズマ化するプラズマ CVDの他、光を照射する光 CVDなどの方法もある。
プラズマCVDでは、通常減圧下において反応容器中の電極間に高周波の電圧を印加してプラズマを発生させ、成膜を行う。原料ガスの分解に高エネルギーの電子を利用できるため、基板の加熱だけでは生じさせることが困難な化学反応でも、比較的低い基板温度で生じさせることができる。そのため、液晶ディスプレイ駆動用の薄膜トランジスタ素子(TFT)や薄膜シリコン太陽電池の製造に必要なアモルファスシリコン薄膜や微結晶シリコン薄膜などの形成に広く用いられている。
一般にプラズマCVDは、熱CVDと比較して下記のような長所を有する。
- 低い温度でも、より緻密な薄膜を形成できる。
- 熱によるダメージや層間での相互拡散を抑制できる。
- 熱分解しにくい原料でも、実用的な成膜速度が得られやすい。
- 熱分解温度の異なる原料同士を用いても、膜の組成比を制御できる。
一方、短所としては、
- 基板や膜表面がイオンダメージを受けやすい
- 電極面積が大きくなると均一なプラズマを発生させることが難しくなり、制御も複雑になる
- 減圧下でのプロセスのため、ガスの利用効率は10~20%と低い、
などが挙げられる。
引用
- ↑ 市川幸美、佐々木敏明、筒井信力, “プラズマ半導体プロセス工学”, 内田老鶴圃 (2003)