「パルスプラズマCVD法」の版間の差分
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2016年5月10日 (火) 16:20時点における最新版
パルスプラズマCVD法 ( Pulsed Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition ) は、プラズマCVDにおいて、プラズマを発生させるために定常放電ではなく、電力供給を周期的にON/OFFさせるパルス放電を利用する手法である。デューティー比(電力のON時間とOFF時間の比)を制御することにより、定常放電に比べてプラズマ発生時の電子密度や電子温度、ラジカル密度を高くすることができる。また、プラズマ中での微粒子の発生や成長を抑制することも可能である。
詳細
プラズマCVDでは、プラズマ中でのラジカル種の生成には電子が重要な役割を果たしている。通常の定常的な放電の場合、電子やラジカル種の発生や消滅が一体となった形でプラズマが維持されているため、そのままでは電子密度や電子温度などのプラズマパラメータやラジカル反応を外部から制御することは困難である。
これに対し、電力供給を周期的にON/OFFさせるパルス放電を利用すると、以下のような特長を持たせることができる。
- 印加電圧の立ち上がり時間を電子密度増加の特性時間よりも短くすることにより、定常放電よりも電子温度を高くできる。
- プラズマのON時間を十分に短くすることにより、プラズマ中の電子密度やラジカル密度を定常放電よりも高くできる。
- 例えばアモルファスシリコンの成膜において、成膜速度を向上させようとするとプラズマ中にサブミクロン程度の微粒子(パウダー)が発生し、膜質や歩留まりの低下を招くが、放電をパルス化してデューティー比を制御すれば、プラズマ中でのパウダーの成長を抑えることが可能である。
- 高い圧力(~大気圧)までプラズマを安定に発生させることができる。
このような特長を利用し、アモルファスシリコン薄膜の他、ステンレススティールやWCなどの鉄系や超硬合金上へのダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜形成などに利用されている。
関連項目